自己破産用語集

破産財団

破産者が破産手続開始のときにおいて有する一切の財産は、破産財団を構成し、破産手続開始決定後は破産管財人が処分し、換価することにより債権者に分配されることになります。

破産財団に属しない財産

自由財産

・民事執行法131条3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭(現金)99万円

・差押禁止財産(生活必需品)

・破産手続開始決定後の原因により発生した財産

自由財産の拡張

99万円以下の現金や差押禁止財産といった法定の自由財産以外の財産についても、職権もしくは申立てにより裁判所が生活の状況、破産者が破産手続開始決定時に有していた自由財産の種類や額、破産者が収入を得る見込み等の一切の事情を考慮して自由財産の範囲を拡張できます。


実務的には、同時廃止による自己破産を申し立てしたが破産管財人が選任された場合を除き、自己破産の申立てをするのと同時に自由財産拡張の申立てが行われることが多いです。

自由財産拡張手続きは各地の裁判所の運用基準があるため、事前に確認する必要があります。


名古屋地方裁判所の運用基準

現金を含め99万円を一応の上限に、預貯金、生命保険解約返戻金、自動車、敷金債権、電話、退職金8分の1については、その評価額が各20万円以下は拡張相当とされています。

同時廃止

破産者がたとえ財産を持っていても少額であり、かつ、特に財産調査のために破産管財人を選任する必要が低い場合は破産財団をもって破産手続費用が償えないものとして、破産管財人を選任しない同時廃止手続によって破産手続を終了する運用がされます。


同時廃止の運用は各地の裁判所の運用基準があるため、事前に確認する必要があります。

同時廃止になった場合、破産管財人が選任されないので、残された破産者の財産は、自由財産と同様に破産者が処分できます。


名古屋地方裁判所の運用基準

原則として破産者の財産総額40万円未満、個別資産30万円未満の場合、同時廃止が認められます。

別除権

別除権とは、破産手続開始のときにおいて破産財団に属する財産につき特別の先取特権、質権または抵当権を有するものがこれらの権利の目的である財産に対して行使することができる権利であり、別除権を有する者は別除権者といわれます。

別除権として認められるためには、原則として再生手続開始の時点で当該担保権につき登記、登録等が具備している必要があります。

別除権は、破産手続によらないで行使することができます。

破産管財人

破産管財人とは、破産手続きにおいて破産財産に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者をいい、破産手続開始決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分する権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属します。

破産管財人は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならず、破産管財人が善管注意義務を怠ったときは利害関係人に対し損害賠償の義務を負います。

破産債権

破産債権とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の債権であって、財団債権に該当しないものであり、破産債権を有する債権者を破産債権者といいます。

破産債権は、破産法に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ行使することができません。

破産債権は、優先的破産債権、一般の破産債権、劣後的破産債権、約定劣後破産債権に分類され、この順番で配当を受けることになります。

優先的破産債権

優先的破産債権とは、破産債権のうち、破産財団に属する財産につき一般の先取特権その他一般の優先権がある破産債権です。一般の先取特権には共益費用の先取特権、雇用関係の先取特権、葬式費用の先取特権、日用品供給の先取特権があります。その他一般の優先権には租税等の請求権があります。

劣後的破産債権

劣後的破産債権は次のような破産債権のことをいいます。①破産手続開始後の利息の請求権②破産手続開始後の不履行により損害賠償又は違約金請求権③破産手続開始後の延滞税、利子税等々

約定劣後破産債権

約定劣後破産債権とは、破産債権者と破産者との間において、破産手続開始前に、当該債権者について破産手続が明視されたとすれば当該破産手続におけるその配当の順位が劣後的破産債権に後れる旨の合意がされた債権です。

財団債権

財団債権とは、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権をいい、財団債権を有する債権者を財団債権者といいます。

財団債権と次のようなものをいいます。①破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権②破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権③破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税等の請求権④破産財団に関し破産管財人がした行為によって生じた請求権⑤事務管理又は不当利得により破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権⑥破産手続開始前3か月間の破産者の使用人の給料の請求権⑦破産手続の終了前に退職した破産者の使用人の退職手当の請求権は退職前3か月間の給料の総額に相当する額だけ認められます。

否認

否認権とは、破産手続開始前より前に、破産者が不当に財産を減少させるなどの破産債権者を害する行為を行っていた場合に、破産管財人がその行為の効力を否定し、破産財団の回復を図るために認められた破産管財人の権利です。

破産債権者を害する行為としては、破産者の財産を減少させる行為、支払い不能後の一部債権者への返済、支払い不能後の一部債権者への担保供与等が考えられます。

破産手続開始申立日から1年以上経過した行為は、支払いの停止後にされたものであること又は支払い停止の事実を知っていたことを理由として否認できません。(破産者が支払い停止後又はその前6か月以内にした無償行為及びこれと同視できる有償行為は除きます。)

不動産の売却

不動産の売却が、不動産業者の査定等に基づいた適正価格により行われたときは原則として否認の対象になりません。ただし、下記の3つの要件のいずれにも該当する場合は否認の対象となる可能性があります(破産法161条)。

①不動産の売却が、不動産の金銭への換価により、破産者において隠匿、無償の供与その他の破産債権者を害する処分をするおそれを現に生じさせるものであること

②破産者が、不動産の売却時、対価として取得した金銭について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと

③相手方が、不動産の売却時、破産者が②の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと

免責

免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れます。

破産者の債務はいわゆる自然債務となり、債権者は訴えをもっても履行を請求することができなくなります。

裁量免責

破産者に免責不許可事由がある場合でも、裁判所が破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができるとされています。