債権回収のポイント

契約時のポイント

契約時、金額が大きい場合は支払がなかった場合のことを考えて、相手の収入や資産を事前に確認しておくことが大事です。相手が不動産を持っていれば、登記簿を確認しましょう。すでに抵当権の登記や差押の登記があったら要注意です。仮に相手に収入や資産がなければ、契約を回避するのも一つの安全策です。


金銭の貸し借りをした場合、必ず契約書を作成してください。契約書を作成していないと、争いになった時、相手が借りていないと主張した場合、金銭の貸し借りの事実の証明が難しくなり債権回収が難しくなる場合があります。


商品の売買を現金取引でする場合は、通常契約書は作成されませんが、継続的な取引の場合や支払が分割払いの場合等は、争いになる可能性があるので契約書を作成しておくべきです。

保証人との保証契約

債務者本人が貸金等を支払わない場合、保証契約により保証人を立てている場合は、保証人から債務者本人に代わって支払ってもらうことができます。

保証人には、単なる保証人と連帯保証人があります。単なる保証人の場合、債権者が保証人に請求しても、まず債務者に請求せよと言って請求を拒む権利(催告の抗弁)があり、また保証人に請求があっても、保証人が主たる債務者に弁済の資力があり、かつ執行が容易であることを証明した時はます債務者本人の財産を執行せよとと言って請求が拒む権利(検索の抗弁権)があります。

この二つの抗弁権が連帯保証人にはありません。そのため債権者側から見ると、保証契約は連帯保証契約にした方が有利です。

保証契約は後でトラブルになりやすいので、契約時にしっかり本人確認と意思確認をしておくべきです。

抵当権、根抵当権、その他担保権の設定

支払が無くなった場合に備えて、不動産等に抵当権等の担保権を設定しておけば、債権回収の見込みが高くなります。

抵当権は目的物の占有を抵当権設定者から債権者に移すことなく使用させたまま、債務の弁済がなされないときに、その抵当物件から他の債権者に優先して弁済を受けることができる権利です。

詳しくはこちらをクリックください。

抵当権の設定・根抵当権の設定

公正証書による契約

契約書を公正証書にしておけば、証拠力が強くなりますし、金銭の支払いを求めるものであれば、執行力があります。つまり訴訟をして判決を得なくても、この公正証書があれば強制執行できます。

公正証書で強制執行するためには、この公正証書の中に、債務者が債務の履行をしない場合には強制執行を受けても文句を言わないという執行認諾約款が必要です。

支払が遅れた場合、遅延損害金を請求できます。

代金が支払期日までに支払われなかった際、その翌日から遅延損害金が発生します。遅延損害金は、契約で利率を定めていなくても請求できます。契約で利率の定めがない場合は、年5%ですが、商取引の場合は年6%です。


貸金の場合、利息制限法4条により、損害金の上限が下記のとおり定められています。

元本が10万円未満の場合 年29.2%

元金が10万円以上100万円未満の場合 年26.28%

元本が100万円以上の場合 年21.9%


貸金業者の遅延損害金の上限は一律年20%です。

相手から支払延期のお願いがあった場合

相手からの支払延期のお願いは、相手が資金不足、資金が調達できないことを意味します。この場合に、支払延期のお願いを拒否し、強硬手段をとると、債務者が自己破産や、民事再生等の債務整理手続をしてしまう可能性があります。

そのため、相手に本当に資金が無い場合は、条件をつけて支払延期のお願いが承認するケースが現実的かと思います。この際は、相手の事情の説明を受けて、返済計画を話し合った上で、下記のような条件をつければ、債権回収の可能性を高めることができます。


・契約書を公正証書にする。

・利息がなければ、利息をつける。

・違約金を定める。

・保証人を用意してもらう。

・担保を提供してもらう。


法的手続の前の交渉による債権回収

支払がない場合、まずは相手に会って事情を聴きましょう。人によっては、会うだけでプレッシャーを感じて支払う場合もあります。

仮に全額払えない場合でも、一部の支払はできるという場合があります。この場合に一部だけでも支払ってもらいます。一部だけでも支払ってもらうことは、全額払われないよりはましですし、一部の支払でも債務の承認とみなされるので、消滅時効の中断をさせることができます。

交渉しても支払ってもらえない場合は、債務確認書(支払約束書)だけでも書いてもらうことが今後の手続のために有効です。裁判になったときの証拠になりますし、債務の承認ということで消滅時効の中断をさせることができます。

相手に債務がある場合、相殺すれば、実質的な債権回収になります。

相殺とは、債権者と債務者がお互いに債権を持っている場合、一方の意思表示によって、対当額だけ双方の債務を消滅させることができるものです。相殺によって実質的に債権回収をすることができることになります。

相殺をするためには、相殺の禁止されていない債権である必要があります。相殺禁止にあたるものは、不法行為による損害賠償請求権、賃金債権、差押禁止債権等です。

また、両債権が弁済期にある必要があります。ただし、相殺する側は、弁済期前でも、期限の利益を放棄できるので、要は相手方の債権が弁済期にあればよいのです。

相殺の意思表示は、内容証明郵便で通知すれば、争いがあった時の証拠になります。

内容証明郵便での請求

内容証明郵便で請求すると、これを受け取った相手は、これは単なる請求ではない、次は法的な手段をとられるのではないかとプレッシャーを感じ、支払ってくるケースもあります。

弁護士、司法書士に代理人になってもらって内容証明郵便を出せば、よりプレッシャーを感じるはずです。

ただし、誰に対しても内容証明をだせばいいというわけではありません。今後も取引を円満に継続していきたい相手に対して内容証明郵便を出すと関係がこじれてしまいます。このような相手であればまずは話合いにより解決すべきです。

保証人への請求

債務者本人が貸金等を支払わない場合、保証契約により保証人を立てている場合は、保証人から債務者本人に代わって支払ってもらうことができます。

担保権の実行

抵当権等の担保権を有している場合、取引先が支払不能、倒産状態になったとしても、担保権を実行し、担保対象物を換価処分うることにより、その処分代金から他の一般債権者に優先して回収することができます。

担保権の実行のための前提として、被担保債権の弁済期が到来していることが必要です。そのため、債権の発生原因となる契約書には、期限の利益喪失約款を定めておくことが重要です。

自社納入商品の引き揚げ

取引相手が倒産の可能性がある場合、少しでも債権回収しておくために自社納入商品の引き揚げが考えられます。この場合、相手の承諾無しでやると窃盗罪になる可能性があるので、商品代金の代わりに担保として引き渡すという承諾書や覚書を取っておくべきです。さらにこの代金が支払われない場合は、処分して売掛金に当てても異存ない文言も入れておくと安心です。(商行為は流質契約が認められています。)

度が過ぎる取り立ては恐喝罪になる可能性があるので注意

恐喝というのは脅迫手段を用いて相手から金品を巻き上げ、不当な利益を得ることです。債権回収のために、ある程度の圧力をかけるのは許されると思われますが、度が過ぎると恐喝罪になる可能性があるので注意が必要です。