遺産分割の前提問題の争い


遺産の範囲の争い

遺産分割協議の全体問題である遺産の範囲について争いが生じている場合があります。例えば名義上は子供の預貯金だが、実質は親の預貯金の可能性がある場合等です。

このような遺産の範囲に争いがある場合に、当事者の対立が深刻な場合は、遺産の範囲を、民事訴訟で確定してから遺産分割協議をすることになります。

遺産分割調停や審判は既判力がないのに対して民事訴訟は既判力があるためです。

遺産確認訴訟

遺産の範囲を確認させるための訴訟として遺産確認訴訟があります。遺産確認訴訟は、財産が現に被相続人の遺産に属し、現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める訴訟です。遺産確認訴訟は、共同相続人全員が当事者として関与する必要があります。

所有権確認訴訟

相続人の一人が財産の被相続人名義を否定してこの財産は自己の固有の財産であると主張する場合は、共同相続人を被告として所有権確認訴訟を提起することになります。


使途不明金

相続人の一人が他の相続人に無断で自分が管理していた被相続人の預貯金を、被相続人の死亡前、又は死亡後に引き出していた場合、使途不明金の問題が生じます。このように被相続人の預貯金が無断で引き出され特定相続人が取得した場合は、不法行為又は不当利得の問題であり、遺産分割協議の前提として解決しなければ話合が進みません。

使途不明金がある場合の手続きの流れ

金融機関から取引履歴を取り寄せます。又は通帳を管理していた相続人が通帳を相続人全員に開示します。

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何に使ったか不明な引き出しがあった場合、通帳を管理していた相続人は他の相続人に説明します。(領収書等の開示)

※被相続人死亡前に引き出しがあり、被相続人に贈与の意思がある時は、特別受益の問題となります。

※通帳を管理していた相続人が自己のために無断で引き出していた場合は、遺産の先取として考えることができます。

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話合いで使途不明金について解決できない場合は、不法行為又は不当利得の民事訴訟の問題となってしまいます。


墓や仏壇の管理、祭祀料

墓や仏壇の管理、祭祀料は遺産分割協議の段階では、考慮したうえで合意することは可能ですが、調停や審判になってしまった場合、考慮されない可能性が高いです。

 

民法878条によると、系譜、祭具及び墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継し、ただし被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継するとされ、さらに慣習が明らかでないときは、家庭裁判所が定めるとしています。