借地借家法は、土地建物の賃貸借について適用される民法の特別法です。建物の賃貸借は借地借家法の適用を受け、建物の賃借権を借家権といいます。
借地借家法が適用される借家とは、一戸建てはもちろん、アパート、マンション、事務所など建物の一部も含みます。
借家権を持つ借家人は借地借家法によって保護され、借家期間満了まで、家主の信頼関係を裏切るような契約違反による解除がなされない限り明渡義務はありません。また契約期間が満了しても、家主に正当事由がなければ明け渡す必要がありません。
このように借地借家法により借家人は守られるため、家主は一度建物を貸してしまうとなかなか返してもらえないので、怖くて建物を貸せません。
このような問題を解決できるのが[定期建物賃貸借契約]です。平成12年3月1日の借地借家法の一部改正で定期借家権の制度が導入され、定期建物賃貸借契約が締結できるようになりました。
定期建物賃貸借契約を締結した場合、契約期間が満了すると更新はなく、借家契約は終了します。普通の借家権のような正当事由も不要です。
建物を貸して賃料を得たいけど、一定期間経過後は確実に返してもらいたい家主は[定期建物賃貸借契約]を検討しましょう。
口頭でも建物賃貸借契約は可能ですが、定期建物賃貸借契約は必ず公正証書などの書面で契約しなければなりません。(必ずしも公正証書で行う必要はありません。)
家主は、定期建物賃貸借契約の締結の前に、事前説明文書をあらかじめ交付して、契約に更新がないことを説明しなければなりません。
事前説明文書は、定期借家契約書とは別個独立の書面でなければなりません(最高裁平成24年9月13日判例)。
事前説明文書には、後々紛争を防ぐために賃借人の署名押印をしてもらっておくべきです。
定期建物賃貸借契約の契約期間が満了したけど、家主がまだ貸しときたい場合又は借家人がまだ借りたい場合は、契約更新ではなく再契約をすることになります。
定期建物賃貸借契約を終了させるためには、契約期間が1年以上である場合は、期間満了の1年前から6か月前までの間に、家主は、借家人に対し、契約期間が終了する旨の通知をしなければなりません。※契約期間が1年未満のときは、通知は不要です。
契約期間が終了する旨の通知が、上記通知期間を経過した後に行われた場合、借家人はその通知の日から6か月間は契約が継続するものとして建物を利用することができます。
定期建物賃貸借契約は、原則として何かしらの特約が無い限り、中途解約はできません。しかし、借家人は下記の要件を全て満たせば途中解約をすることができます。
①借家人に、転勤、療養、親族の介護などのやむを得ない事情があり、その建物を自己の生活の本拠として使用することが困難になった場合
②建物の床面積が200平方メートル未満である場合
解約申入れがされた場合、契約は解約申入れの日から1か月を経過することによって終了します。