契約は口約束でも成立するものですが、不動産売買契約の場合は高額な取引になることや契約から引渡しまで時間がかかることから、リスクを回避するために、売買契約書を作成するのが通常です。
不動産会社に不動産売買を依頼していれば、当然不動産売買契約書は作られますし、また銀行等の金融機関から住宅ローンを借りる場合は、不動産売買契約書が審査のために必要なので、契約書は必ず作成しなければなりません。
売買の目的となる不動産を特定して記載します。通常、登記記録の表題部の内容を記載します。
手付は売買契約締結と同時に買主が支払うことを定めなければなりません。手付金は、売買代金の一部に充当すると契約書に記載しておくことにより、売買代金の一部(頭金)の役割を果たします。
手付は通常解約手付と解され、手付解除期限前であれば、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は渡した手付金を放棄し、反対に売主は手付金の2倍の金額を払えば一方的に解約できます。
売買代金の支払時期を[〇年〇月〇日までに]と規定しておいて、その日までいつでも準備が整った日に決済できるようにするのが通常です。
公簿売買の場合、リスク回避のために、後日実測面積と登記記録面積が異なることが判明しても、当事者双方が互いに売買代金の増減を請求しない特約を定めておくとよいでしょう。
実測売買の場合、売買契約時に登記記録面積を基準として売買代金を定め、測量後はその実測面積で売買代金を清算するという方法がよく使われています。
特約がないと、不動産の所有権は売買契約締結時に移転するため、通常は売買代金完済時に所有権が移転する特約を定めておきます。引渡しの条項は、民法の原則どおり、売買代金の支払と引き渡しの同時履行の関係を確認する条項です。
所有権移転の登記費用は、通常権利を受ける買主が負担します。
通常は、売主が設定されている抵当権登記の抹消や賃借権の負担の除去をして完全に買主が使用できる状況にして引き渡す義務があることを定めます。
不動産売買契約書には、収入印紙を貼る必要があるので、印紙代の負担を定めておきます。
固定資産税・都市計画税は毎年1月1日時点の不動産所有者が納税することになるため、引渡し後は買主負担になるように清算し、買主負担分は決済時に支払う旨を通常定めます。
物件から生じる収益とは、収益物件の賃借人からの賃料が考えられます。負担金は、マンションの管理費、修繕積立金が考えられます。
民法の定めでは、危険負担は買主が負担します。売主は天災で壊れた建物を引き渡せばよく、買主は解約もできなく全額支払わなければなりません。しかしこれでは不動産取引の実情に合わないため、不動産売買契約では売主が負担する旨を定めるのが通常です。
手付解除と契約違反による解除の違いですが、手付解除の場合には、その行使期間であれば、手付金相当額が相手方に支払えば、理由に関係なく解除できます。それに対して、契約違反による解除は、当事者の一方が、自己の債務の提供はしたうえで債務履行をしない者に対し、履行を催告し、それでも応じない場合の解除です。
違約金については、解除者が違反者に対し、損害賠償額の算定根拠を明確にするのが困難なため、予め損害賠償の額を定めておく金額です。違約金は、売買代金の10%から20%で定めておく場合が多いです。
買主が住宅ローンを利用して不動産を購入する場合は、売買契約締結前に金融機関の事前審査を受け、その融資可能の回答を得た後に売買契約を締結することになるのが一般的です。
しかし売買契約締結後、融資の承認が得られないリスクもあるので、住宅ローン特約(融資特約条項)を定めるのが通常です。
万が一、融資の承認が得られなかった場合は、この特約を定めておけば、買主は売買契約を解除でき、払ってしまっているお金も返してもらえるのでリスクを回避できます。
瑕疵とは、欠陥のことです。瑕疵が問題になるのは買主が瑕疵を知らず、又は通常の注意をしても瑕疵を発見できずに売買契約を締結したときです。この場合、買主は民法570条により、その瑕疵で目的を達成できないときは契約解除ができ、その他の場合は損害賠償請求できます。
民法上は、買主は瑕疵を知ったときから1年以内に解除又は損害賠償請求をしなければなりませんが、これでは売主は買主が瑕疵を発見しない限り、いつまでも責任を免れないので契約で期間を短くしている場合が多いです。
瑕疵担保責任を一切負わない旨の特約も有効ですが、売主が事業者で買主が消費者の場合には、事業者が瑕疵担保責任を一切負わない旨の特約は原則無効になります(消費者契約法8条)。
宅建業者が宅地建物の売主になる場合、その行使期間を引渡しの日から2年以上になる特約をする場合を除き、民法の規定よりも買主に不利な特約をしても無効になります(宅建業法40条)。
新築物件の場合は、構造耐力上主要な部分又は雨水の侵入を防止する部分として政令で定めるものの隠れた瑕疵について、最低10年間は売主い対し担保が義務付けられ、これを特約によって短縮又は責任を軽減することはできません(住宅の品質確保の促進等に関する法律94条)。
各地方自治体で制定されている暴力団排除条例を想定した条項です。最近の不動産取引の契約書にはこの条項が記載されている場合が多いです。
契約書に定めないことが起きたとき等何か問題が生じたとき、話し合うための規定であり、売主・買主に対して何らかの権利義務の発生を規定するものではありません。
万が一、訴訟になったときに備えて定めておき規定です。物件所在地の裁判所を合意管轄裁判所として定めておく場合が多いです。
通常の契約条項に追加して特約を定める際に記載します。