相続放棄の申述が受理されると、相続の開始を知ってから3か月を経過する前であっても、相続放棄の撤回をすることはできません(民法919条1項)。
ただし相続放棄の申述をした後であっても、家庭裁判所に受理される前であれば、相続放棄の申述を取り下げることはできます。
そのため相続放棄の申述(相続放棄の申立書類の提出)をした後に、心変わりした場合は、早急に取り下げる必要があります。
相続放棄は、法律行為としての意思表示なので、下記のような民法の第一編(総則)、第四編(親族)の規定によって取り消すことができます。
・未成年者が法定代理人の同意を得ないで単独でした場合
・成年被後見人自らがした場合
・被保佐人が保佐人の同意を得ないでした場合
・詐欺又は強迫によってされた場合
・後見監督人がいるのに、後見人がその同意を得ずに被後見人を代理してした場合
・後見監督人がいるのに、後見人がその同意を得ずにした同意に基づいて未成年後見人がした場合
相続放棄を取り消すためには、家庭裁判所に取消しの申述を申し立てて受理される必要があります。
相続放棄の取消権が、追認できる時から6か月以内に行使しないと、時効によって消滅します。相続放棄の時から10年を経過した時も、行使することができなくなります。
管轄裁判所は、相続放棄と同様、相続開始時の家庭裁判所です。
相続放棄の取消しの申述が却下された場合、即時抗告の申立ができますが、申述の不受理が確定すると、相続人は、相続放棄の取消しを主張できなくなります。
相続放棄の申述をして受理された場合でも、申述が錯誤(重大な勘違い)に基づいてされた場合には相続放棄は無効となります。相続放棄の無効の主張は、取消しの場合と異なり、家庭裁判所の申述の手続等の法律上の規定はありません。必要な場合に、民事訴訟によって無効を主張をすることになります。