一般社団法人のうち一定の要件に該当するものを【非営利型一般社団法人】といい、法人税法上、公益法人等として取り扱われます。
なお非営利型一般社団法人の要件を満たす場合でも、登記簿上の名称は非営利型一般社団法人と登記されることはありません。登記簿上の名称は一般社団法人〇〇になります。非営利型かどうかは、あくまで法人税法上の分類に過ぎないためです。
非営利型一般社団法人になると、収益事業から生じた所得のみが課税対象になることから、一般社団法人を設立する場合、非営利型一般社団法人にする場合が多いです。
非営利型一般社団法人にするためには、いくつかの要件を満たさなければなりません。要件に関しては下記に記載しています。
一般社団法人の設立時に、非営利型一般社団法人の要件を考慮せずに設立登記してしまい後悔している方の相談を聞くことがあります。非営利型にしたい場合は一般社団法人の設立時から要件を満たせるように注意しましょう(途中で非営利型に移行もできますが、役員変更、定款変更、税務署への届出、確定申告等の手間がかかります)。
非営利型一般社団法人の要件は下記のとおりです。下記の【非営利性が徹底された法人】又は【共益的活動を目的とする法人】のどちらかの全ての要件を満たせば、特段の手続を踏むことなく法人税法上の非営利型一般社団法人となります。
【非営利性が徹底された法人】は、剰余金の分配だけでなく、残余財産に関しても分配できないようになっています。定款に法人解散時の残余財産の帰属に関し規定する必要があるです。
【共益的活動を目的とする法人】は、会員の共益的活動を目的とした法人であり、会員の会費で運営され、残余財産が残った場合は総会の決議により会員に返還することができます。
1.剰余金の分配を行わないことを定款に定めていること
2.解散したときは、残余財産を国・地方公共団体や公益社団法人、公益財団法人等一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めていること
3.上記1及び2の定款の定めに違反する行為(上記1、2及び下記4の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含みます。)を行うことを決定し、又は行ったことがないこと。
4.各理事について、理事とその理事の親族等(注)である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること。よって非営利型一般社団法人にするためには、理事の人数は3名以上必要になります。
(注)① その理事の配偶者
② その理事の3親等以内の親族
③ その理事と婚姻届は出していないが内縁関係にある者
④ その理事の使用人
⑤ ①~④以外の者でその理事から受ける金銭その他の資産によって生活している者
⑥ ③~⑤の者と生計を一にするこれらの者の配偶者又は3親等内の親族
※一般社団法人において、社員に剰余金又は残余財産を分配する旨の定款の定めは無効とされ、さらに社員総会で社員に剰余金の分配をする旨の決議はできません(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律11条2項及び35条3項)。しかしこれらの条文を言い換えれば、社員以外の者への剰余金又は残余財産を分配する旨の定款の定めは有効となり、また社員に残余財産を分配する決議は可能ということになります。非営利性が徹底された非営利型一般社団法人においては、この法律の抜け道をふさいでいるのです。
1.会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていること。
2.定款等に会費の定めがあること。
3.主たる事業として収益事業を行っていないこと。
4.特定の個人又は団体に剰余金の分配を行うことを定款に定めていないこと。
5.解散したときにその残余財産を特定の個人又は団体に帰属させることを定款に定めていないこと。
6.上記1から5まで及び下記7の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと。
7.各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること。よって非営利型一般社団法人にするためには、理事の人数は3名以上必要になります。
※非営利性が徹底された法人の要件2と異なり、共益的活動を目的とする法人の要件5は解散したときに残余財産が特定の個人又は団体に帰属させる定款の定めは無効としているだけで、公益的な団体に贈与しなければならないとまでは定款に定める必要はない。つまり解散時に社員総会決議により残余財産を分配することができます。この観点で共益的活動を目的とする法人の要件は非営利性が徹底された法人の要件よりも緩いといえます。
この回答は国税庁の法令解釈通達の趣旨説明1-1-10にあります。
主たる事業として収益事業を行っていない場合に該当するかどうかは、原則として、その法人が主たる事業として収益事業を行うことが常態となっていないかどうかにより判定する。この場合において、主たる事業であるかどうかは、法人の事業の様態に応じて、例えば収入金額や費用の金額等の【合理的指標】を総合的に勘案し、当該合理的指標による収益事業以外の事業の割合がおおむね50%を超えるかどうかにより判定することとなる。
【合理的指標】とは、収入金額、費用の金額、資産の価額、従業員の数など様々なものが考えられるが、そのうちから法人の事業の様態に応じた合理的指標を決定することになる。
この回答は国税庁の法令解釈通達の趣旨説明1-1-11にあります。
非営利型法人が理事の退任に起因して当該要件に該当しなくなった場合において、当該該当しなくなった時から【相当の期間】内に理事の変更を行う等により、再度当該要件に該当していると認められるときには、継続して当該要件に該当しているものと取り扱って差し支えない。ここでいう【相当の期間】とは3~4か月以内とされています。
非営利型法人の要件の全てに該当する一般社団法人は、特段の手続きを踏むことなく当然に非営利型一般社団法人となります。
非営利型一般社団法人を設立する場合、収益事業をしないのであれば税務署に【法人設立届出書】を提出する必要はありませんが、収益事業を行う場合は【収益事業開始届出書】を税務署に出す必要があります。
非営利型法人の要件のうち、一つでも該当しなくなったときには、特段の手続きを踏むことなく普通の一般社団法人となります。
非営利型法人になったとき又は非営利型法人が普通法人になったときは、速やかに異動届出書を税務署に提出する必要があります。
非営利型一般社団法人を設立して、収益事業も行わない場合、税務署への届出は給与を払うことが無い限り、何も届け出る必要はありません。※収益事業を開始する際には【収益事業開始届出書】を税務署に出す必要があります。
しかし法律上の【収益事業】はかなり広範なものであり、会費収入しかない特定の法人以外は、何かしらの収益事業に当てはまってしまう可能性が高いです。
【収益事業】
1 物品販売業
2 不動産販売業
3 金銭貸付業
4 物品貸付業
5 不動産貸付業
6 製造業
7 通信業
8 運送業
9 倉庫業
10 請負業
11 印刷業
12 出版業
13 写真業
14 席貸業
15 旅館業
16 料理店業その他の飲食店業
17 周旋業
18 代理業
19 仲立業
20 問屋業
21 鉱業
22 土石採取業
23 浴場業
24 理容業
25 美容業
26 興行業
27 遊技所業
28 遊覧所業
29 医療保健業
30 技芸教授業
31 駐車場業
32 信用保証業
33 無体財産権の提供等を行う事業
34 労働者派遣業
収益事業かどうかの判断は難しいです。一見収益事業に当てはまらないような事業でも収益事業と認定されることがあります。
判断が微妙な場合は、管轄の税務署に確認するのが安心です。当事務所でも収益事業かどうか微妙な場合は、依頼者に管轄税務署に確認してもらっています。