抵当権抹消の実務上の注意点

抵当権抹消の登記は、簡単な部類の登記とされていますが、実務上の重要な注意点がありますのでいくつか記載していきます。


抵当権設定者が死亡した後に、抵当権が消滅した場合

抵当権設定者(不動産所有者)が死亡した後に、弁済されて抵当権が消滅した場合、抵当権の抹消登記の前提として相続による所有権移転登記を申請しなければなりません。


抵当権設定者の住所・氏名が変更した後に、抵当権が消滅した場合

抵当権設定者(不動産所有者)の住所・氏名が変更した後に、弁済されて抵当権が消滅した場合、抵当権抹消登記の前提として所有権登記名義人の住所・氏名変更登記を申請しなければなりません。


抵当権者が合併した後に、抵当権が消滅した場合

抵当権者が吸収合併された後に、弁済され抵当権が消滅したときは、抵当権の抹消登記の前提として合併による抵当権移転登記を申請しなければなりません。


抵当権者の本店・商号が変更した後に、抵当権が消滅した場合

抵当権者の本店又は商号が変更した後に、弁済され抵当権が消滅したときは、抵当権の抹消登記の前提として抵当権者の本店・商号変更登記の申請は必要ありません。この場合、抵当権抹消登記申請の際、本店・商号の変更を証する書面(登記簿謄本)を添付すればよいです。


異なる抵当権設定者の複数の不動産に対する共同抵当を抹消する場合に一括申請できるか?

異なる抵当権設定者の複数の不動産に対する共同抵当を抹消する場合、別々に登記申請する必要はなく一括申請できます。(例)土地は父名義・建物は子供名義の抵当権抹消も一括申請できます。


同じ抵当権者の異順位の抵当権の抹消登記の一括申請できるか?

同じ抵当権者の異順位の抵当権は、抹消登記を一括申請できます。例えばA銀行の1番抵当権とA銀行の2番抵当権は同じ日付の解除又は弁済であれば、一括申請で同時に抹消できます。この際、抹消する抵当権は2つにもかかわらず、登録免許税は不動産1個分の1000円でよいというのがポイントです。

当然別々に申請もできますが、別々に抹消申請すると登録免許税がもったいないので、司法書士としては一括申請して登録免許税を節約すべきです。


抵当権と根抵当権の抹消登記を一括申請できるか?

同一不動産上に登記された数個の抵当権と根抵当権を抹消する場合、登記権利者及び登記義務者並びに抹消の登記原因及びその年月日が同一であれば、抵当権と根抵当権の抹消を一括申請できます(登記研究434号)。

【申請書例】

登記の目的   抵当権及び根抵当権抹消

原因      平成30年5月5日解除

抹消すべき登記 平成7年7月7日受付第7777号

        平成8年8月8日受付第8888号

権利者     甲野太郎

義務者     乙銀行


敷地権の目的である土地が同一の複数の区分建物の抵当権抹消の場合

敷地権付区分建物の抵当権抹消の登録免許税は、専有部分と敷地権の数×1000円なので、専有部分が1つ、敷地権が1つであれば登録免許税は2000円ですし、専有部分が1つ、敷地権が2つであれば登録免許税は3000円です。

それでは敷地権の目的である土地が同一の複数の区分建物の抵当権を抹消する場合、登録免許税はどうなるでしょうか? 敷地権の目的である土地が同じ所在及び地番であれば不動産を1つとカウントしますので、専有部分の数+敷地権1000円が登録免許税となります。

例えば居宅である敷地権区分建物と物置である敷地権区分建物(敷地権の目的である土地の所在及び地番が同じ)の共同抵当権を一括申請で抹消する場合、登録免許税は4000円ではなく、3000円です。


古い抵当権の解除証書と委任状で抵当権抹消できるか?

抵当権抹消のための解除証書と委任状が古いため、代表取締役が変更してしまっている場合でも、古い解除証書と委任状を添付し、抵当権抹消登記申請できます。

この場合、抵当権抹消登記申請書に記載する代表取締役は、登記申請時の代表取締役です。その他事項に【委任状記載の旧代表取締役の代表権限が消滅した旨と代表権限を有していた時期】を記載しなければなりません。

【その他事項記載例】

代表取締役甲野太郎の代表権限は消滅している。

代表権限を有していた時期は平成26年5月20日から平成29年5月20日である。

 

※過去に法務局で上記文言を追加するように補正連絡が来たことがあるので、古い抵当権抹消の委任状で抵当権抹消登記申請をする場合はお気を付けください。

 

※会社法人等番号によって旧代表取締役が代表権を有していたことが分かれば、会社謄本の添付は不要ですが、会社法人等番号によっても代表権を有していたことが確認できなければ、コンピュータ化前の会社閉鎖謄本等の取得が必要な場合もあります。

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