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建物明渡

司法書士の仕事をしていると不動産会社から建物明渡、土地明渡の相談を受けることがあります。司法書士がこの建物明渡、土地明渡の手続を代理して行うことができるかどうかは訴額によって変わってきます。

 司法書士は訴額140万円までの簡易裁判所の範囲のものであれば、代理することができます。しかしこの金額を超えてくると代理ができないので家賃滞納者との交渉もできませんし、代理して建物明渡請求訴訟、建物収去土地明渡請求訴訟ができないので、裁判所提出書類作成はできるものの本人訴訟という形での手続にならざるを得ませんので、相談者にとっては満足のいく手続ができない可能性がでてきます。そのため司法書士にとって訴額の算定はかなり重要になってきます。

 よくある金銭支払請求の訴額は、請求金額そのままなので、例えば100万円請求したら、そのまま訴額は100万となります。しかし建物明渡と土地明渡の訴額の算定は少し特殊です。不動産の明渡請求における訴額は、目的物の価額の2分の1となります。不動産の価額は原則として固定資産評価額によります。さらに土地については平成6年4月1日より当分の間、固定資産評価額に2分の1を乗じた額とされています。

したがって建物の固定資産評価額が500万円の場合は下記の計算になります。

500万円×2分の1=250万円←司法書士は代理できない

土地の固定資産評価額が500万円の場合は下記の計算になります。

500万円×2分の1×2分の1=125万円←司法書士は代理できる

 

 このように司法書士が建物明渡、土地明渡の手続きをする際、代理できる場合と代理できない場合がありますので、相談時には必ず訴額を確認しなければなりませんし、その旨相談者の方にも説明しなければなりません。私自身としてはせっかく相談いただいて自分自身で手続したくてもこの訴額の問題のため手続きができなかった案件もあります。このような時、司法書士の簡裁訴訟代理権は使いにくいなーと思ってしまいますね。